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コラム

マダム・山中の「巴里[パリ]の空の下」

『ベルリン・フィルと子どもたち』は続く

 お蔭様で『ベルリン・フィルと子供たち』は、お正月映画の中でもヒットとなり東京ではアンコール上映も行われ、また地方都市でも次々に公開され全国での上映は続いています。

 またこの映画は、本国ドイツでも数々の賞を受賞し、ドイツでも過去のドキュメンタリー映画の記録を塗り替える大ヒットとなりました。日本でも、この映画のことはいたるメディアで取り上げられ、また最近我々は、この映画を配給したことで児童健全育成推進財団というところから表彰され、5月13日には厚生労働大臣の賞状を頂きます。この映画が、「児童福祉文化賞推薦作品」に選ばれたことによる表彰です。映画を配給する仕事をして、15年になりますが、こういう賞をいただいたことは初めてですし、映画のヒットにより花を添えてくれる結果となりました。私たちはこの映画を見つけたときに、この映画の中で行われているベルリン・フィルハーモニーとサイモン・ラトルの行っている教育プログラムの志しの高さに賛同し、このプロジェクトを一人でも多くの人に伝えたい、という思いからこの映画の配給を決めました。この映画の仕事は、色々な意味で本当に実り多き結果を生み出してくれ、私たちもこの映画に出会えたことに幸せを感じています。この映画は、今後も全国の映画館以外にも、教育関係の団体や財団、市町での色々な上映団体にも上映会の機会を作ってもらって、まだまだ広く皆さんに見ていただければと思っています。

 元々このダンスプロジェクトは、ベルリン・フィルハーモニーの教育プロジェクトの一環で年1回のハイライトのお披露目の場ですが、最初の年の「春の祭典」、2年目の「ダフニスとクロエ」に続いて、今年のダンスパフォーマンス曲はストラヴィンスキーの「火の鳥」でした。

 そして、2回目までは、1回のみの公演でしたが今年は、好評のため2日間の公演になり、しかもそのチケット6000枚は、随分前に完売となっていました。このプロジェクトの模様が映画になったことから、公演の知名度も上がったのでしょう。映画を配給したことから私は招待していただき、23日の土曜日、映画で見たあのトレプタウのアリーナに行って来ました。アリーナの舞台はかなり広く、オーケストラも30分前から練習に余年がありません。

 また観客の層も普段のベルリン・フィルハーモニーのコンサートに来ている人々と違い、ダンスで参加している人の友人、知り合いや親戚など、客席は大きな発表会に来ている人たちという雰囲気です。ベルリン・フィルハーモニーのメンバーも客席の中に知り合いが来ているらしい人も多く、直前までみんなうろうろしていたりおしゃべりしたりして、和やかなムードです。でもきっちり定刻にはほぼみんな席につき、緊張した瞬間が流れ、広い舞台の端から指揮者のサイモン・ラトルが出てきて2年前の「春の祭典」を映画で見た時と同じように、素人のダンサーが殆どのパフォーマンスが始まりました。今回は8歳から80歳までの200名が参加すると聞いていましたが、子供から老人までが混じった舞台で、50分のパフォーマンスは、見事にまとまっていました。振り付けは同じチームが行っていましたが、「春の祭典」では助手だったスザンナ・ブロウトンが振付をしていて、映画に出ていた初代振付家のロイストン・マンドゥームは、今回は参加していないようでした。あの映画の中でも、最後にマンドゥーム氏は杖をついて出てくるように、このプロジェクトを6週間子供たちに教える作業は、本当に体力を消耗し、最後には入院したそうですから、今回は若い先生たち5人が振り付けチームでした。しかし初回のマンドゥーム氏の教えは守られていて、「観客に真面目に見てもらいたいと思ったら、まずあなた方が真面目に取り組まないと!」という振付家の言葉がプログラムに載っていました。きっとまた同じような苦労が、6週間繰り返されたのだろうな、と映画を見ているので感慨深く今回のステージを見ました。今回もさまざまな国籍の子供たちが参加しており、またこのプロジェクトに続けて参加している子供たちもいると聞いていましたが、あの映画の中でもインタビューに答えていた、目のキラキラした黒人の男の子、オラインカも、また踊っていました!映画をご覧になった方は、覚えておられると思いますが、けなげに頑張っていたあの男の子は、地道に努力を続けているようで、今回も群舞の中に混じって踊っていたのを見て私も嬉しく思いました。

 そしてやはりこのプロジェクトはいつもクライマックスからラストに掛けての高揚感が素晴らしく、振付や音楽の盛り上げ方が、200名のダンサーを使って今回も感動的に演出され、サイモン・ラトルの静止のポーズとともに、嵐のようなブラボーが観客から沸き起こりました。あの映画を見たときの感動を、実際にその場で体験できたことは本当に貴重なことでした。

 ベルリン・フィルと子供たち、は続いているな、というのが実感です。現地のベルリンに行ってこのパフォーマンスを見る機会はなかなか我々にとってはありませんが、映画として記録されたドキュメンタリーを上映し続けていくことによって、まだまだ多くの方に知っていただきたいと思います。映画は全国で上映中ですが、DVDの発売の問い合わせを時々頂きます。 この秋に発売が決定しましたので、これも嬉しいニュースとして今回のご報告に付け加えさせていただきます。

セテラ・インターナショナル 山中陽子

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