いちばん身近にいながら、お互いを理解できずにバラバラになっていたハートマン家の人々。難民の青年との出会いをきっかけに人生を見つめ直し、生きる喜びを取り戻していく心温まる物語は、外国人との文化や習慣の違いによるハプニングの連続に笑い、泣けると口コミで話題となり大ヒット、2016年度ドイツ映画興行収入NO.1を記録。『善き人のためのソナタ』のプロデューサーとヒットメーカーのサイモン・バーホーベン監督がタッグを組み、ドイツの人気俳優たちが競演。これからの国際化社会に向けての、“おもてなし”のヒントをくれる。難民問題に揺れるドイツから、本国のアカデミー賞で観客賞を受賞した、明るいユーモアがたっぷり詰まった必見の一作がいよいよ公開。
ミュンヘンの閑静な住宅地に暮らすハートマン家のディナーの席で、母アンゲリカは難民の受け入れを宣言。教師を引退して生き甲斐を見失った彼女は、夫リヒャルトの反対を押し切って、ナイジェリアから来た難民の青年ディアロを自宅に住まわせる。家族ははじめてのおもてなしに張り切るが、大騒動が起きてしまう。さらに、ディアロの亡命申請も却下に。果たして、崩壊寸前の家族と天涯孤独の青年は、平和な明日を手に入れることが出来るのか──?
1941年5月13日オーストリア、ウィーン生まれ。幼い頃よりバレエを習い、58年にはウィーン・ヨーゼフスタット劇場の最年少劇団員となる。60年より数本、ドイツ映画出演し、『秘密諜報機関』(61)でハリウッドデビュー。フランク・シナトラやジョン・ウェインなどと共演し、サム・ペキンパー監督『ダンディー少佐』(65)、テレンス・ヤング監督『悪のシンフォニー』(66)に出演。60年代末にはイタリアやフランスの映画でも活躍。68年より夫である映画監督ミヒャエル・バーホーベンと映画プロデュース業を開始。80年代からはドイツ国内のテレビ番組でも精力的に活動。77年にベルリン国際映画祭審査委員長、03から10年にかけてはドイツ映画協会の初代議長を務めた。他の作品に『戦争のはらわた』(77)、『アム・アイ・ビューティフル?』(98)など。なお、今作の監督であるサイモン・バーホーベンは実子。
1953年4月10日ドイツ、ケルン生まれ。18歳より演劇を習い、翌年舞台デビュー。ハリウッド映画のドイツ語吹き替えの声優としてキャリアを積む。85年、ローランド・ズゾ・リヒター監督のデビュー作“Kolp”で脚光を浴び、コメディ映画『メン』 (85)で一気に知名度を上げる。主演を務めた『悦楽晩餐会~または誰と寝るかという重要な問題~』(97)では、バイエルン映画賞での主演男優賞をはじめとして多数の賞に輝いた。これまで120本以上の映画およびTVドラマに出演するなど精力的に活動を続けている。
1974年11月20日ドイツ、ミュンヘン生まれ。ボストン音楽院で演技を学び、舞台出演を開始。00年より、TV映画やドラマの俳優としてキャリアを重ねる。主演を演じた“Kiss me Kismet”(06)でアドルフ・グリメ賞を獲得。“Doctor’s Diary”(08-11)でのドクター役は広い層から支持を得た。主演と脚本を務めた「ヴィンセントは海に行きたい」(10/TV放映)では、ドイツ映画賞において最優秀作品賞や最優秀主演男優賞受賞、その他多数の映画賞を総なめにした。他に『君がくれたグッドライフ』(14)など。
1985年4月21日ロシア、レニングラード州生まれ。“MTV Home”(09-11)より、現在に至るまでテレビの司会業で活躍。サイモン・バーホーベン監督 “Men in the City”(09)で映画デビューを果たし、“Men in the City2”(11)にも連続出演。恋愛コメディ映画“Traumfrauen”(15)では、エリヤス・エンバレクと共演した。他には『くもりときどきミートボール』(09)や『モンスター・ホテル』(12)のドイツ語吹き替えなど。
1982年5月29日ドイツ、ミュンヘン生まれ。高校時代、演劇クラブに所属後、コメディ映画『過激GIRLS⭐︎GIRLS』(01)で映画デビュー。“Whole Train”(06)で注目され、出演したTVシリーズ“Turkish for Begginers”(05-08)はドイツTV賞を獲得するなど、批評家から絶賛され、知名度を上げた。主演した、「ゲーテなんてクソくらえ」(13/映画祭上映)は、ドイツ映画史上最速の期間で100万人の劇場動員を記録し、同年のNo.1ヒット作となった。他に『ピエロがお前を嘲笑う』(14)など。サイモン・バーホーベン監督作は“Men in the City”以来の出演となる。
本名、エリック・カボンゴ・イルンガ。1984年5月21日コンゴ、キンシャサ生まれ。ベルギー育ち。映画プロデューサーや Krazy-Eの名でミュージシャンとしてなど幅広く活動。サイモン・バーホーベン監督“Men in the City”のオランダ版リメイク作品“Mannenharten”(13)にカメオ出演。彼の人生に焦点を当てたドキュメンタリー映画“What about Eric?”(14)で脚光を浴び、ギャング映画“Black”(15)では、Krazy-Eとして役を演じた。
1972年6月20日、ドイツのミュンヘン生まれ。父親は映画監督ミヒャエル・バーホーベン。母親は女優センタ・バーガー。13歳の時に初めてシナリオを書き、高校の演劇部で上演。高校卒業後はニューヨークのリー・ストラスバーグ演劇学校を経て、ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・アートで文学士号を取得し卒業。ショートフィルム“Nice meeting you”(2000)は大学の映画祭でルー・ワッサーマン賞を受賞した。“Vino Santo”(98)などのTV映画やミュージックビデオで監督を務めると同時に、“Bride of the Wind”(01)などで俳優としても多くの映画に出演。初の劇場公開作となる風刺コメディ映画“100 Pro”(01)を監督し、09年には“Men in the City(Männerherzen)”が大ヒット。ジュピター賞、ババリアン映画賞最優秀脚本賞を受賞した。また同作の劇中歌としてサイモン自らが書き下ろした風刺的な楽曲‟Alle kinder dieser Erde”はyoutubeで空前のヒットに。『デッド・フレンド・リクエスト』(14)では国際色豊かなキャストを揃え、インターネット上の仮想空間を舞台にしたホラースリラーを監督。これまでと全く異なったジャンルを切り開き、今後さらなる活躍が期待される。
■フィルモグラフィー
1998
Water(短編/監督)
1999
Phone(短編/監督)
2000
Nice meeting you(短編/監督)
2001
100 Pro(監督・出演)
2009
Men in the City /Männerherzen(監督・出演)
2011
Men in the City 2/Männerherzen … und die ganz ganz große Liebe(監督・出演)
2014
デッド・フレンド・リクエスト(監督)
2015
Night Life(脚本)
2016
はじめてのおもてなし(監督)
2015年の春、この映画を作り始めた当初は、難民を受け入れると決めたことで、いざこざが起こる家族のショートストーリーでした。この話は、少し特殊でめずらしいものでした。しかし、私には楽しく、面白いものに思えました。小リッチ層の家族、彼らの家庭内問題と、全く文化圏が違う人、より深刻な問題に直面した人たちとを比べたら面白いのではないかと思ったのです。ここから、いくつかのコメディととても感動的なアイデアが生まれました。

当時、この核家族についての話が、ドイツにとってある種のメタファーとして、ましてや社会風刺として考えられるなんて思ってもいませんでした。それから、2015年の9月に、突然この話は、かけがえのないトピックになったのです。急に、この映画が、ばかばかしいほど現実的に思えて、すべての家庭内の議論こそが、今までにないくらいエキサイティングなものだと気付きました。

脚本を書き、監督もしている中で、私は遊び心満載にリラックスして、政治的には正しくないような見方でアプローチしようとしました。そして最後の最後まで、世の中で起こった現実の出来事を作品に取り込もうとしました。また、何事においても深刻には受け止めすぎないようにしました。なぜなら、「難民問題」の複雑さについて考えたときに、どんな映画でもコメディはもちろんのこと、すべての人々の政治観を満足させることはできないし、同様にすべての感受性を考慮することもできないからです。

ドイツ、そしてヨーロッパは、今、私が生まれてこのかた経験したことがないほど激変しています。皆が将来の展望について議論し、模索し、そして適応しようとしているのです。しかし、この混沌とした、不確かな、落ち着きのない状況はまた、コメディにとっては肥沃な土壌となるのです。

『はじめてのおもてなし』は、何よりもまず、純粋なコメディだということ。政治的解決策を提供することもできないし、そのように望んでもいません。それにもかかわらず、勝手ながら、この映画が少なくとも、物事をリラックスして考えるのに役立つこと、また、その過程において、人道主義的な思考を促せられたらと願っています。