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コラム

マダム・山中の「巴里[パリ]の空の下」

『ジャン・コクトー展/ジェラール・フィリップ展』

  パリでは9月よりジャン・コクトー展、10月よりジェラール・フィリップ展が、開催されていましたが、先ごろ両展覧会ともに大盛況のうちに、終了しました。ポンピドゥーセンターで行われていたジャン・コクトー展は今までに日本でも開催されたジャン・コクトー展の規模をはるかに上回る素晴らしく充実した展示でした。ジャン・コクトー自身が詩人、映画監督、舞台演出家、劇作家、俳優、画家、とあまりにもその才能があふれ出ていた人でしたから、その交流範囲の広さ、付き合っていた人々のリッチさ、それを十二分に感じさせてくれる展示でした。なんと多種多様な信じられないような文化人、アーティストたちとの交流があったことでしょう!少し上げただけでも、画家ではマリー・ローランサン、モディリアニ、デュフィ、ブラック、キースリング、ウォーホール、そしてたくさんのピカソによるコクトーのデッサン画があり、バレエ界の伝説のダンサー、ニジンスキーを知り、作家ではラディゲやコレット、写真家のマン・レイ、そしてシャネルとも交流のあったコクトー。まさに文化と芸術の潮流に彼はいたのだということを、実感できた展示でした。豊富な彼の交流関係は、すべて彼の芸術、作品に反映されていて若い時から晩年まで、彼の人生の濃密な時間を十分に感じる展示で、そのあまりの展示の量の多さにじっくり見るには、半日必要でした。

 一方36歳で亡くなったジェラール・フィリップの展示は国立図書館で行われました。由緒ある国立図書館の中の一番大きなギャラリー・マゼリンという部屋を仕切り、彼の人生を年代順に追った展示でした。こちらは、一俳優の展示ですから、コクトーとはまったく違った彼の一生の仕事、作品を忠実に追った展示でしたが、年代順なので、彼が出演した映画と舞台の相互関係もよくわかるわかり易い展示で、とても好感の持てた真摯な展示でした。ジェラール・フィリップもとても若い21歳で初舞台を踏み、成功を収め、映画、舞台にと活躍した人でした。その俳優としてのキャリアは36歳で亡くなるまでのたった15年だったわけですが、彼もまたコクトーとは別の意味でわずか15年でどうしてこんなに多くのことが出来たのだろう、と驚くほどの仕事をした人でした。約30本の映画に出演し、20の舞台作品を演じ、そして俳優協会の会長を努め、フランス映画の交流のために日本、中国、アメリカ、ロシア、など世界各国を文化大使のごとく訪問し、また多くの朗読の録音も残し「星の王子さま」などは、今でもフランスの国民的に有名な録音物として永遠のベストセラーです。その一方私生活では政治犯となった父親を助ける援助をし、共産主義の運動に参加し、そして結婚して二人の子供の父親となった人でした。普通の人の3倍ぐらいの仕事を15年の中で行ったことは、驚嘆すべきことであり、改めて感動したものでした。日本からも、ジェラール・フィリップ友の会の会員の方々が約50名このパリでの回顧展に行かれました。日本でもこのような展示が出来ることを期待したいものです。
セテラ・インターナショナル 山中陽子

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