マダム・山中の「巴里の空の下」
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『ドキュメンタリーブームに乗るわけではないけれど…』 |
フランスはもともとドキュメンタリー映画をとても多く劇場で上映する国で、日頃からドキュメンタリーを映画館で見る習慣があります。勿論それらは単館や小さな公開ですが、その数は日本よりもはるかに多いのです。しかし日本もここ1年ぐらい前から、ドキュメンタリー映画の公開が急に増え、今ある種のドキュメンタリーブーム、ともいえるぐらいドキュメンタリー映画が一般の観客の関心を集めるようになってきました。それにはフィクションの映画のクオリティの低下や、また劇映画のテーマも映画の歴史が100年以上続いているうちにねた切れにもなりますし(だからこんなにリメイクも多いですし)、また本当に面白くて質のいい映画もそうたくさんはないことなど、いろいろ原因はあると思います。そしてドキュメンタリー映画の真実の持つ面白味、知的好奇心の向上などが、昨今のドキュメンタリーブームの要因でもあると思います。
セテラでは、7年ぐらい前から実は時々ドキュメンタリー映画を配給していました。それぞれテーマに興味が持てるものがあったときに、またそのテーマに興味を持つ観客が日本にある程度存在すると思えた作品の場合に配給しましたが、それぞれ特徴ある作品で満足しています。ドイツの耽美派監督の『愛の破片』は、オペラ歌手の歌と人生に対する愛を描いたユニークなドキュメンタリー。最近DVDも出ました。またドキュメンタリーの巨匠ワイズマンの『コメディ・フランセーズ 演じられた愛』は、フランスの300年以上の歴史を持つ王立劇場の360度の日常を描いた4時間近いドキュメンタリー。でも本当に面白くて、長さを感じない秀逸な作品でした。ナチスSSのアドルフ・アイヒマンのイスラエル裁判の模様を編集したドキュメンタリーは、各紙の社会面にも取り上げられ、話題になった作品でした。そして、つい最近は『パリ・ルーヴル美術館の秘密』が、大ヒットしました。
そして今年の後半、今のドキュメンタリーブームに乗るわけではありませんが、マイケル・ムーアの『華氏911』などこれから話題のドキュメンタリーが公開される中、セテラでも2本のユニークなドキュメンタリーを公開します。まず11月3日公開の『オランダの光』は、日本でもファンの多いフェルメールやレンブラントに代表されるオランダ絵画の持つ独特の陰影を持つ自然光「オランダの光」に対する光を探求するドキュメンタリーで「光」に対する初めての映像の試みであり目を見張る体験をしていただける映画です。そして、更に12月初旬には、ベルリン・フィルハーモニーのドキュメンタリー、『ベルリン・フィルと子どもたち』を公開します。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が主席指揮者サー・サイモン・ラトルとともに、子供たちにクラシック音楽の楽しさを体感してもらおう、という教育プロジェクトを発足。その一環としてダンス・プロジェクトが行われる事になり、その第1回目の『春の祭典』を250名のベルリンの子供たちが、8週間の特訓とリハーサルを経てベルリン・アリーナに立ち、ベルリン・フィルハーモニーのオーケストラと競演するまでの模様が描かれた胸熱くなるドキュメンタリーです。ベルリン映画祭をはじめ世界中の映画祭で絶賛され、観客の熱い支持を集めている話題のドキュメンタリーを、今秋ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演の直後に皆様にお届けします。お楽しみに!!!
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セテラ・インターナショナル 山中陽子 |
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