恋愛映画の金字塔『そして僕は恋をする』の名匠アルノー・デプレシャン監督が20年の時を経て、人生も半ばを過ぎた主人公が、恋に生きた青春の日々を追憶する―今だからこそ描ける恋に真正面から向き合った。愛しているのに遠く離れて暮らすしかなかった、不器用なまでに真っ直ぐな恋人たち。輝く青春の日々を見守るうちに、胸が熱くなる本当の恋を誰もが想い出さずにはいられない。本年度第68回カンヌ国際映画祭の監督週間では、緻密な演出力と温かな眼差しとユーモアが大絶賛され、SACD賞を受賞。デプレシャンの集大成にして新たなる傑作が誕生した。
『そして僕は恋をする』の主人公〝ポール″を演じた名優マチュー・アマルリックが、本作でも引き続き同名の主人公を演じる。若き日の恋人たちにはカンタン・ドルメールとルー・ロワ=ルコリネが、ヌーヴェル・ヴァーグの作品群から飛び出したような鮮烈さと、現代的な感性が溶け合った新たな魅力を放つ。そして、エッフェル塔の見えるアパルトマン、カルチェ・ラタン、美術館、カフェなど、恋人たちが似合うフランスの風景、80年代のフレンチファッション、音楽、さり気なく登場する本や詩を発見する楽しみに満ちている。

外交官で人類学者のポールは、長かった外国暮らしを終えて、フランスへ帰国する。ところが空港で、彼と同じパスポートを持つ“もう一人のポール”がいるという奇妙なトラブルに巻き込まれる。偽のパスポートが忘れかけていた過去の記憶を呼び覚まし、ポールは人生を振り返りはじめる。幼い頃に亡くなった母、父との決裂、弟妹との絆。ソ連へのスリリングな旅、そしてエステルとの初恋。憧れのパリの大学に通うポールと故郷に残ったエステルは、毎日手紙を書き綴った。変わらぬエステルへの想いに気づいたポールは、数十年ぶりに彼女からの手紙を読み返し、ある真実に想い至るが──。