外交官で人類学者のポールは、長かった外国暮らしを終えて、フランスへ帰国する。ところが空港で、彼と同じパスポートを持つ“もう一人のポール”がいるという奇妙なトラブルに巻き込まれる。偽のパスポートが忘れかけていた過去の記憶を呼び覚まし、ポールは人生を振り返りはじめる。幼い頃に亡くなった母、父との決裂、弟妹との絆。ソ連へのスリリングな旅、そしてエステルとの初恋。憧れのパリの大学に通うポールと故郷に残ったエステルは、毎日手紙を書き綴った。変わらぬエステルへの想いに気づいたポールは、数十年ぶりに彼女からの手紙を読み返し、ある真実に想い至るが──。